2016年5月9日月曜日

『デスメタルアフリカ』のモザンビークの国民的スターScratchインタビュー全文公開

首都圏では4月22日に放送されたタモリ倶楽部の『アフリカンデスメタル』。ネットでは多くの反応が寄せられた。それをまとめたものが以下のTogetterである。

タモリ倶楽部『「アフリカ大陸で発見!こんなところにデスメタル!?」』の反響


さてこの放送の元となった『デスメタルアフリカ』の中でも特に天然キャラの憎めない奴として人気のScratch。ビデオクリップの珍妙さだけでなく、インタビューの受け答えもぶっ飛んでいた。




あまりにも面白いので、今回、特別にScratchの許可を得て、本ブログに記事を全文公開する。



Scratchのインタビューが突出して面白いが、他のバンドのインタビューもなかなか面白い。『デスメタルアフリカ』にはそれらが全て載っているので、より興味を持った方々は、買ってみてはいかがだろうか?

『デスメタルアフリカ』を買えるお店




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さてモザンビークはおろか、アフリカ全土のメタル(?)バンドの中でもイチオシのScratchだが、接触するのには困難を極めた。一応、Facebookページは存在するのだが、ほぼ完全に放置状態。メッセージを送るも、全く無反応。南アフリカのDiabolus IncarnateのDieterにも仲介を手伝って貰ったが、手がかりを得られず。下記のビデオクリップを撮影したラッパーCR Boyにも仲介をお願いしたが全く反応が得られなかった。

ところがある日、Rock Manuelからメッセージに対する返事が来ており、インタビューに応じるとの事。同氏の携帯電話の番号とメールアドレスが記載されていた。しかしその本文はどう見ても英語には不慣れの様子。さすがにいきなり電話を掛けるのは憚られる為、メールに質問事項を送ってみたところ、なんとその数十秒後には返事が! そしてそこには「Mail Delivery Subsystem」という言葉が記されていたのだった! 次頁に続く。

そもそもモザンビークはアフリカの中でも最貧国の一つで、南アフリカへの出稼ぎ者が多いにしても、公用語はポルトガル語、おまけに多言語社会なので、実際に接触は出来たとしても、他の国のバンドと違ってインタビューを敢行するのは至難の業と見られた。ところがモザンビークの別のデスメタルバンド、The Lost GraveのドラマーであるHolmes氏とチャットをしていた時に、なんと彼がScratchのドラムも兼任しているという事が発覚した。Lost Grave自体のインタビューは次項に載っているが、ここで彼にScratchについて聞いてみた事を紹介する。

ただしこちらとしてはScratchに対してインタビューをしているつもりだったのだが、本人はどこまでそういうものだと理解していたかは正直非常に疑問に思えた。おそらく海外からバンドについてインタビューされるという事自体、経験がないのでいまいちピンと来なかったのではないかと推測する。またこちらが質問をしている際にも、途中で犬に餌をあげてくると言ったり、突然反応が無くなったりしたこともしばしばである。こちらも意思疎通を図ることに対しては半分諦めが入っていたのだが、何の前触れもなく気紛れにメッセージを送ってくることがある。そしてそれは実は今現在も続いている。


―ちょっと今インタビューできるかな?

Holmes もちろんだ。ほかのメンバーも喜ぶよ。

―Scratchはアフロメタルと名乗ってるけど、それは一体どういうものなんだい?

Holmes ちょっと悪いけど今18時でメシ食うから。金曜日にビデオクリップを送るよ

―(注:早速会話が成り立ってない……)分かった。他のメンバーにもよろしく伝えておいてよ。ビデオも楽しみにしている。

Holmes (注:次の日)メタル……、日本は今どう?

―どうもこんにちは、ところで「Loku Unga Lavi Tsika」の歌詞カードあったら送ってくれないか? とても気に入ってて一緒に歌いたいんだけど、何歌ってるかさっぱり分からないからさー。

Holmes 探しておくよ。ただ今からフランス語の授業を教えにいけないといけないから、またね。

―了解。この曲は日本でもとても人気が出る可能性があるので、是非歌詞を送ってほしいね。「Va fambi vamussiya」の歌詞もできれば見たい。

―(注:次の日)ところで歌詞は見つかった?

Holmes 明日探してみるよ。ところでチャットする時の時間を決めた方がいいな。そっちで夜の時、こっちは朝だ。ワールドカップの時も確かそうだった。Bien je vous attends au matin..aurevoir...(注:そこからなぜかフランス語)

―オレは大体パソコンの前にいるしスマホもすぐ見られるので、いつでもいいよ。

Holmes (注:次の日)今スタジアムに向かってるんだけど(注:おそらくスタジオのこと)。Goreventのアルバムを持ってるし、Arch Enemyの日本公演のDVDも持ってるぜ。

―GoreventのようなスラミングとScratchって音的に共通点ない気がするんだけど。

Holmes そうだな。あとDark Necropolyというバンドでもプレイしている。

―普通ブルデスファンって、メロディとか嫌いだと思うんだけど、よく全く異なるジャンルのバンドを兼任できるね。俺自身はどんなジャンルにも寛容なタイプだから、それはむしろ良いことだと思ってるけど。

Holmes こっちではドラマーの数が絶対的に不足しているから、引っ張りだこなんだよ。ところで歌詞なんだけど、オレ見つけられなくて、Rock Manuelが持ってるっぽいんだけど、会社にあるらしくて。ところでオレも、昔モザンビークのメタルの本を書こうと思った事があるんだけど、全部消えちゃったんだよね。ウイルスに感染して(注:両方とも本当か疑問)。

―それは残念だね。ところでRockがリーダーなの? とてもカリスマ的だよね。

Holmes そうだね。そして才能に恵まれている。

―ところで幾つなの?

Holmes オレは31。Rockは36。

―31でMorphes Descends好きとかって、かなりシブくないか? Scratchってどんなバンドから影響を受けたの? かなり謎なんだけど。

Holmes あとCynideとか好きだな。

―その路線でいうとDemilichとかAdramelech、Eternal Solsticeとか思い出すな。

Holmes Rock ManuelはIron Maidenから影響を受けたらしいよ。

―へー、そんなシンプルな事だとは思わなかった。

Holmes そうそう、あとMangled Torsosとかいたよね。

―Rock Manuelはデスメタルとかブラックメタル聴くの?

Holmes ヨシロー、悪いんだけどちょっとそろそろ犬に餌をあげにいかないといけない。20分ぐらい待っててくんない?

―どうぞどうぞ。



Holmes (注:と思いきやその瞬間)おい、これは何だ? いつもこんなメシ食ってんのか!!??

―あ、これは日本にある中華料理屋で食べたサソリだよ。日本料理じゃない。

(注:筆者のFacebook上にアップしていた、上海小吃というゲテ物料理屋で食べたサソリを示している)

Holmes 中華料理かー。

―モザンビークに中国人って大量にいるよね?

Holmes 大量にいるよ。

―日本人もMozal(注:アルミニウムの精錬会社でモザンビーク最大の企業。三菱商事が25%出資)関係者とかいそうだね。

Holmes おはよう(注:前行に対しては完全スルー。そして次の朝に唐突に再開)。歌詞探すの忘れちゃったから、また明日送るよ。今、MetallicaのDVD見ながらビール飲んでる。Francais pour une nuit...dvd...(注:突如またフランス語)

―チュニジアって国に住んでたからフランス語も多少分かるよ。

Holmes じゃあアフリカにも詳しいんだね。

―今はアフリカにぞっこんだね。特にモザンビークにハマっちゃって。ポルトガルについてはどう思う?

Holmes オシャベリな人達だね。

―彼らがモザンビークを植民地にした事に対して怒りの感情はあるの?

Holmes ないね。オレはそういうタイプの人間じゃない。

―モザンビークにポルトガル人って多いの? 

Holmes ポルトガル本国が不況だから出稼ぎに来てるけど、彼らの商売ったらレストランとか食べ物ばかりで、あんまりうまく行ってる気がしない。こっちには資源があるからさー。

―ポルトガルだけでなくブラジルとかアンゴラなどのルゾフォニア(注:ポルトガル語圏)の国々の交流が盛んになってきてるって話だけど、FRELIMO(注:モザンビーク解放戦線)とかの知り合いいるの?

Holmes 何で……?

―いや、彼らがどれだけ一般的な存在なのかと思って。じゃあRENAMO(注:モザンビーク民族抵抗運動。FRELIMOと死闘を繰り広げた武装組織)の知り合いは?

Holmes それについては一切答えられない。

―こうしたテーマはまだ話しにくいって事だね。了解。それじゃあ何でフランス語ができるの? 対岸のマダガスカルはフランス語だけど、モザンビークとフランスってなんか関係あったっけ?

Holmes フランス語のツアーガイドなんだよ。観光客が結構来てる。アメリカ人とかも。しかしキミはオレに対して質問攻めだけど、自分の事は一切答えてくれないな。日本についてもっと教えてくれよ(注:インタビューだって言ってるのだが……。それにこの時点では筆者に対して質問は一切なされていなかった)

―そうか、気を悪くしないで欲しい。モザンビークの人と関わるのなんて初めての事でついつい興奮しちゃって。何でも聞いてくれ。

Holmes 例の大地震はどうだった?

―実は昨日もあったよ。地震は日常茶飯事で、ちょっとしたものなら全く気にならないぐらい。

Holmes 津波からよく生き残ったな。

―あれは北日本の沿岸だけで、東京では津波は起きてないよ。

Holmes 歴史上のリーダーとかは誰?

―サムライとかは昔いっぱいいたけど、第二次大戦後はあんまり目立った人はいないな。

Holmes こっちにはサモラ・マシェル(注:モザンビーク初代大統領)とかエドゥアルド・モンドラーネ(注:FRELIMO初代書記長)とか英雄がいるぜ。

―マシェル大統領の妻はその後、マンデラの妻となったよね。それについてはどう思うの?

Holmes それについては答えたくないな(注:その後、突然息子と飼っているもう一匹のワンちゃんの写真が送付されてきた)

―かわいい子供だね。もし彼がデスメタラーじゃなくてギャングスタラッパーになったらどうする?

Holmes 彼がその道を選ぶなら、オレには止められないな。ヨシロー、ちょっとそろそろ。

―オッケー。いつも悪いね。

Holmes (注:一週間後、突然無言でライブ写真が複数送られてくる。しかしいずれも携帯で撮ったものと見られ解像度不足)

―歌詞も送ってくれる? (注:その後、交通事故に遭ったとか無関係な話が続いたが、最終的に歌詞が送られてくる事はなかった。今でもたまに突拍子もないメッセージが送られてくる事がある。「何でブラックメタルでもないのに白塗りしてるのか」何回も聞いてみたのだが、答えてくれる事はなかった。答えにくかったのかもしれない。白塗りについては、これ以上触れない方が良さそうな気配がする)。

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